生活の中に浸透しはじめたロボット技術
投稿する 08.10.2014いま、ロボットビジネスが多方面で注目を集めている。産業の現場で最先端のロボットが活躍するのはもはや珍しくない光景となり、一般の家庭でもロボット掃除機や学習ロボットなどを活用する事例が徐々に増加してきた。
ロボットの需要をにらんで、グローバルIT企業はロボット時代の主導権を握るため関連技術の開発に力を入れており、米Googleによるロボット関連企業の買収の動きがニュースとして取り上げられたほか、米Amazonではロボットを活用した無人宅配システムの試験を開始。
日本でもソフトバンクがロボット開発部門を設立、感情認識パーソナルロボットPepper(ペッパー)を公開して話題になった。
日本の産業用ロボットが好調に推移
あらゆる製品づくりの現場で活躍する産業用ロボットにおいても、活況が伝えられている。日本ロボット工業会(JARA)が発表した産業用ロボットの2014年4~6月期の出荷額は、前年同期比18.7%増の1192億円と、3四半期連続のプラスとなった。海外向けでは溶接用ロボットが好調で、また国内出荷では半導体製造や電子機械の組み立てがけん引して堅調に推移しているという。(参考:産業ロボ出荷額、4~6月18%増、3四半期連続プラス。2014/08/01 日経産業新聞)
少子高齢化が急速に進展し、労働力の不足が懸念されている日本においては、ロボット技術は産業分野だけでなく、介護・福祉、家事、安全・安心といった生活分野での活用に期待が高まっているといえるだろう。すでに、生活のさまざまな場面でロボットの働きを目にする機会が増えてきたことを実感できる場面も多い。
ロボット掃除機など、生活に身近な製品が続々登場
一般家庭においては、すでにロボット掃除機が多数活躍するようになってきた。スイッチを入れれば自動で部屋を掃除し、自動でドックに戻り充電を開始するロボット掃除機は、外出中に掃除をすませてくれるとあって人気となった。福祉の分野でも、高齢者の認知症予防や治療につながるとして、高齢者の話し相手になるロボットが老人ホームなどで活躍しはじめた。このように、人間の生活を改善させるためのさまざまな役割を担うロボットは「生活支援ロボット」と呼ばれ話題になっている。
ソフトバンクが発表したPepperも、人の感情を認識する世界初のパーソナルロボットとして注目を浴びている。自立稼働によって人に寄り添い、人間らしい自然な音声で会話ができるほか、クラウド・ネットワークと連携することで情報活用が可能なのが特長だ。今後、Pepperの活用を巡って、搭載するソフトウェアの開発も活発になりそうだ。(参考:ソフトバンクモバイルとアルデバラン、世界初の感情認識パーソナルロボット「Pepper」を発表 2014年6月5日 ソフトバンクモバイル株式会社 ALDEBARAN Robotics SAS)
自治体によるロボット開発支援の取り組みも活発化
生活支援ロボットへの取り組みは、国や県などの自治体でも活発化している。ロボットによる産業革命を押し進め、「ロボットによって日本を元気にする」ことを目標とした組織「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」は、これまで5年間にわたって「生活支援ロボット実用化プロジェクト」を実施してきた。このプロジェクトに参画した2社のロボットが2014年2月、世界で初めて国際安全規格「ISO 13482」の認証を取得。実用化に向けた取り組みが加速した。(参考:生活支援ロボットの国際安全規格ISO13482が発行されました 平成26年2月5日(水) 経済産業省)
また、神奈川県や12市町、企業や大学などで構成される「さがみロボット産業特区協議会」では、ロボット産業の県内誘致や育成に力を注いでいる。同協議会では、特区の会員企業が開発し、実証実験などが行われている生活支援ロボット5製品について、介護保険の適用を厚生労働省に申請した。コミュニケーションロボットや食事介助機器、リハビリ機器のほか、自動ページめくり機や高齢者見守りシステムといったユニークな製品ばかりだ。これらの機器は現在レンタル契約で介護施設などでの導入が進んでいるが、高額な費用がネックとなっており普及が遅れている。介護保険の適用が実現すれば、本人負担は1割となるため普及に弾みが付き、特区内の産業集積に結びつく可能性がある。これらの製品は今後、厚生労働省の検討会での審査を経て、早ければ来年度中に介護保険の適用が決まるという。(参考:さがみ特区協議会、生活支援ロボ普及に弾み 介護保険適用申請 2014/8/30 日本経済新聞)
経済産業省とNEDOによると、日本国内のロボット市場は2035年に9兆7千億円を超える見通しだ。遠い未来のことだと思われてきた「ロボット時代」は、いつの間にか現実に近づいてきた。とはいえ、生活支援ロボットの浸透はまだまだこれからといえる段階。今後さらなる巨大産業へと発展するポテンシャルを秘めており、ますます目が離せない業界になるだろう。