将来は現金不要 – モバイル決済システム
April, 2014
消費者がスマートフォンアプリになじみ深くなるにつれて、消費者は自分の電話で何でもできる即座のサービスをますます期待します。これは、モバイル決済に乗り気ではない消費者を減らし、最終的には商業的に実行可能なモバイル決済システムを現実のものにします。
モバイル決済市場における急成長の潜在性は、次の点を含めて、最近の調査からも明白です。
- 全世界のスマートフォンの53%で、2015年までにNFCが有効になる (Frost & Sullivan)。
- モバイル決済業界は、2015年までに世界中の取引のうち1兆ドルを占めると見込まれている (Heavy Reading Networks Insider)。
- 2016年には、モバイル決済ユーザーが448百万人に達し、6,170億ドル相当の市場になる。大半のモバイル決済ユーザーがアジア太平洋地域に集中するが、最も高い収益を占めるのはアフリカである (Gartner)。
「モバイル決済」という用語は何年も使用されていますが、この用語が意味することが常に明らかとは限りません。モバイル決済に加えて、「非接触型決済」という用語も使用されています。
非接触型取引は、一般的に近距離技術を使用して行われる決済を指します。例えば、NFC(Near-Field Communications)を使用してモバイルデバイスが非接触型決済端末へ信号を送り、取引が実行されます。クレジットカードまたは「スマートカード」もモバイルデバイスの代わりに使用できます。しかしながら、モバイル決済は非接触型決済になる必要はなく、スマートフォンアプリまたはSMSを通じて決済を行なうことができます。
モバイル決済には、次の3つの主要なモデルがあります。
- SMS – 消費者がテキストメッセージを使用して決済リクエストを送信し、料金が消費者の電話代またはオンライン財布に課金される。
- 直接モバイル課金 – 消費者がウェブサイトの精算ページでモバイル課金オプションを選択し、消費者のモバイル口座に課金される。
- モバイルウェブ決済 – 携帯電話のWAP (ワイヤレスアプリケーションプロトコル) により、消費者が決済するためのモバイルウェブページを使用したり、アプリをダウンロードできるようにする。
小売業者らは、日本や韓国で早々と開始されたモバイル決済に、この決済の成長シフトを見始めています。そのため、主要な世界的小売業者がモバイル決済に特化した製品やサービスを立ち上げています。1例として、スターバックスのプリペイド式モバイル財布アプリは現在、その米国での全収益の10%を占めていることが分析会社Ovumによって報告されています (Ovum View – 「モバイル決済に大きなビッグバンは起こらないだろう」2013年5月、Gilles Ubaghs氏)。
モバイル決済の安全性を確かにする
多様な形態の各モバイル決済が個別のモデルで動作し、セキュリティコンプライアンス要件をよりやりがいのあるものにしています。
正しい規格が適用されていることを保証する数多くの承認機関が存在し、また、世界的な相互運用の目標に向かって協働しています。1例として、EMVCoとNFC Forumは、NFC機能のあるモバイルデバイスの開発とテスト実施プロセスを最適化するべく協同しています。GlobalPlatformとEMVCoも、両社のモバイル決済認証構造で提携しています。
GlobalPlatform
モバイルデバイスの決済アプリケーションまたはカードは、安全な決済を確かなものにするための重要な焦点領域です。産業間に共通の非営利協会であるGlobalPlatformは、安全な技術のもとで、安全で相互運用可能な複数アプリケーションの開発と管理を促進する仕様を開発することにより、この課題に取り組むことを目標にしています。
GlobalPlatformはまた、安全チップとデバイス向けのコンプライアンスプログラムも管理、保守、そして展開し、製品が機能要件を満たして意図したとおり機能することを確認しています。GlobalPlatformは数多くのテストツールを開発し、またテストを請け負うのに適格な試験所をいくつか任命して、製品仕様の監督のみならずテストツールと試験所にコンプライアンス商標を発行する登録認証機関としても活動してきました。
NFC Forum
NFC Forumは、仕様と認証プログラムを開発する産業間に共通のフォーラムであり、非接触型決済などの多様なアプリケーションに近距離無線通信技術を使用することを可能にしています。
NFC Forumの仕様は、JIS X6319-4のみならずISO/IEC 18092やISO/IEC 14443-2,3,4のような、既存の規格に基づいています。また、対応デバイスが一貫した方法で動作するべく、NFC Forumデバイスに関係のあるそれらの規格の一部を詳述している実装仕様があります。
EMVCo
EMVCo LLCは、決済システムのEMV ICカード仕様を管理、保守、および効果を高める目的で、1999年にEuropay、MasterCard、そしてVisaにより設立されました。2004年にはJCBが加入し、2009年にはAmerican Express、2013年にはUnionPayとDiscoverが加入しました。
EMVCoの主な役割は、世界ベースでのICカードの相互運用と決済システムの受入を保証して、EMV ICカード仕様を管理、保守、そして効果を高めることです。また、端末やカードコンプライアンスのテスト実施向けに型式認証プロセスも保守し、単一端末とカード認証プロセスの存在を確実にしています。
EMVCoは2012年、モバイル決済向けにEMV仕様を使用したテストコンプライアンスのメカニズムを作成する、CMP (非接触型モバイル決済) 製品型式承認プロセスを確立しました。
EMV規格の認証は、認定された試験場で完了したテスト結果の提出後にEMVCoによって発行されます。また、EMVCoの型式承認を得るためにベンダーが使用しなければならない認定試験所は定期的に監査されます。TÜV SÜD Product ServiceおよびTÜV SÜD Zactaの両者とも、EMVCoの承認を受けた試験機関です。
EMV認証試験の実施には、2つの段階があります。EMV Level 1 では物理的な電気やプロトコルレベルのインターフェースが対象になりますが、EMV Level 2では決済アプリケーションの選択やクレジット金融取引処理が対象になります。
Level 1のテストは、次の内容で構成されます。
- 事前検証テスト - さまざまなテスト位置において、プロトコルレベルでの最低限のコミュニケーションを確実に確立することができるようにする
- アナログテスト - RFパワーと信号インターフェースを検証する
- デジタルテスト - 一連のプロトコルテストを実行し、デジタルコマンドがEMVCo仕様に基づいていることを確認する
Level 2のテストは、EMV仕様に定義されているデビット/クレジットアプリケーション要件をレビューします。EMVCo端末テストを実施するにはテストツールが必要であり、テストソフトウェアスイートを実行するPCおよび非接触アンテナで構成されます。これらは、次のような特定の決済スキームに対応する数多くのソフトウェアライブラリも提供します。
- EMV Contact
- Expresspay (American Express)
- Visa Contactless
- Paypass (MasterCard)
- EMV Entry Point (全ての決済スキームに共通の規格)
- Discover Network (Diners)
Visa VSDC、American Express AEIPS、MasterCard MChip、JCB JSmartのような小メンバーのEMV実装、あるいは米国におけるLINKまたはカナダにおけるInteracのような非EMVCoメンバーのEMVに対応した実装に準拠するには、共通のEMVCoテストに合格した後で決済ブランドによるソフトウェアの認証を必ず受ける必要があります。
なぜTÜV SÜDを選ぶのか
TÜV SÜDは正式認可を受けたEMVCoの Level 1およびLevel 2の試験所として、決済システム市場に10年以上の経験があります。
革新的製品を専門に扱う独立型第三者テスト認証機関として、TÜV SÜDはデビット/クレジットEMV規格の整合性に対する決済システムデバイスのテスト実施の認証を受けています。最新の携帯電話システム向けに公平なサービスを提供します。
また、TÜV SÜDは認証テストの実施に使用されるテストツール向けRF Analogue要件の品質、信頼性、および完全性検証作業をNFC Forumにより任命されています。
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