デジタル取引に潜むリスク:E-コマース製品はどの程度安全か?

「E-コマースの製品は実店舗と同等の安全性が考慮されていますが、消費者はその製品の安全性試験に関する説明文書を求めることができます」

カピル・バンサール氏 (Mr. Kapil Bansal)
Senior Vice President for Consumer Products and Retail, TÜV SÜD

1994年に人々に認識されて以降、E-コマースは徐々に社会に浸透していきました。2017年、世界のE-コマース売上高は2兆ドルを突破し、毎月全世界の人口の20%以上にあたる人々がE-コマースで商品を購入しています。特に中国にある「シングルズ・デイ(独身の日)」では、11月11日に世界最大の24時間オンラインセールが行われ、この現象をより顕著に見ることができます。2017年の独身の日には、売上高は2016年と比較して40%増加し、256億ドルと記録を大幅に更新しました。米国においては、過去数年間でブラックフライデーの売上も勢いを取り戻してきています。2017年は、アマゾンとウォルマートの両社が11月24日のブラックフライデーの前にプレセールを開催しました。 

E-コマースは2000年代初頭のITバブル崩壊のような業界全体の衰退や、進化を続ける技術的背景を通じてなお生き残る、活発な業界であることが実証されました。

 今日、E-コマースの巨大企業は私たちの日常生活の一部となっています。例としてアマゾンが挙げられます。1995年に設立された同社は、消費者の購買経験をより満足させるためのデータ分析手法や、革新的な広告手法の開発、そしてAIアシスタント『Alexa』の発売による人工知能の導入など、多くの面でパイオニアとして君臨し続けています。現在では世界最大のインターネット企業となり、2016年には1300億ドルの収益を上げました。

アジアに巣食う龍たちもまた、デジタルの爪を研ぎ続けています。中国の巨大企業であるJD.comおよびアリババは、E-コマースにおいて53億ドル以上の売上高を計上しており、その合計評価額は247億ドルを超えています。また、JD.comは、大学や空域の安全が確保された地域において商品提供のためのドローンの使用を開始しました。

そしてeコマースおよびeオークションの双方において高い人気を誇るプラットフォームであるeBayも存在します。2004年のクレイグズリストの買収に伴ってeBayは電子商取引プロセスを民主化することによって、誰もが土地を含むあらゆる商品を販売できるようになりました。

オンラインでのリスク

例に挙げたウェブサイトが人気だからといって、安全上のリスクがないわけではありません。アマゾンを例にとっても、その幅広い製品全般にわたって安全基準を維持しているわけではありません。リコールに失敗した結果、大腸菌で汚染された大豆バターが販売されたことがありました。さらに直近では、同社のプラットフォーム上で販売された不完全な日食用メガネによりユーザーが目に傷害を負いました。JD.comは、虚偽の発注により売上を水増ししたこと、および肯定的な商品レビューを「購入」するという虚偽の商品レビューを作成したことにより逮捕されました。eBayに至っては、プラットフォーム上でガンの偽薬を含む潜在的に危険性をはらむ商品の販売を許していることで数々の批判を受けるようになりました。

ご想像のとおり、E-コマースに対する安全性監査は、実店舗の小売業者に対するものほど簡単ではありません。テュフズードのConsumer Products and Retail部門のSenior Vice Presidentであるカピル・バンサール氏 (Mr. Kapil Bansal)は、eコマースの安全性確保に関する2つの重要な課題を提起しました。

ひとつめは、E-コマースプロセスにおけるスピードです。



E-コマースは販売者に対して消費者への迅速なアクセスを提供するため、製品の安全性がチェックされる前に販売される可能性があります。

カピル・バンサール氏 , Senior VP for Consumer Products & Retail


 

ふたつめは、ストック・キーピング・ユニット (SKU:Stock Keeping Unit)の逼迫です。「Eコマースサイトでは、驚異的な品揃えを提供しています。一部の製品は供給者から提供されたもので、一部は電子取引サイトによるプライベートラベルあるいは直接輸入品です」とバンサール氏は解説します。「消費者がこの2つのチャネルを区別することができないため、製品の安全性に関する問題はE-コマースサイトに帰属すると考えられます」

しかし、懸念はこれだけに留まりません。E-コマースにより、供給者は自社の製品を世界に向けて販売することができ、それに伴い既存の国境や地域特有の製品安全規制は消滅します。これにより消費者は無限の選択肢を手にする一方で、各規制が世界的に標準化されていないため、より高い製品安全性リスクに晒されます。ある国で安全とされる製品でも、別の国では安全でないとされるかもしれません。

E-コマースは、モバイルマーケットプレイスアプリのカルーセルのように、消費者同士での売買も可能にしました。これらのプラットフォームは、いかにして消費者間取引の透明性を確保するという重責を負うことができるのでしょうか?

E-コマースによる売り手の匿名性、ますます複雑化する市場におけるソリューション実現への高まる要求など、他の課題に関しても、電子商取引プロセスの複数の段階でリスクが発生する可能性が潜んでいます。

変化する消費者認識

しかし、消費者はオンライン製品の安全規制について適切に告知されているのでしょうか?

「E-コマースにより消費者と販売者の距離は遠くなりましたが、消費者はE-コマースで販売される製品が従来の店舗で買ったものと同程度に安全であると想定しています」とバンサール氏は述べます。

これは危険な憶測です。オンラインで販売される製品は、遮断、追跡および監視することが困難です。未チェック品、禁止品、あるいはリコール品などは、実店舗で製品を購入する場合と比較すると、非常に簡単に消費者の手に渡ります。E-コマースはまた、不完全な製品ラベルや安全警告を伴う製品を消費者が購入することも容易とします。安全性適合評価に関する要求は、一部の市場では悲惨な状況にあります。

しかし、今日の消費者は世界中の情報にアクセスすることが可能です。製品安全に関する規則や法律に関する情報は、1クリックで入手できます。国境を越えた規制に拘束されない消費者および供給者は、製品の安全性を確保し堅守するため、より重い責任を負う必要があります。

バンサール氏は消費者に対し「消費者はE-コマースにおいても実店舗と同等の製品安全性が考慮されていること、それゆえ消費者はE-コマースサイトに対し製品の安全性試験に関する説明文書を提示してもらうことを躊躇すべきではありません」と注意喚起しています。

米国では、E-コマースに実店舗で販売されている製品と同様の製品安全規則が適用されています。製品の安全性は輸入代行者または国内製造者の責任であり、CPC、トラッキングラベルが添付されているかを確認し、「合理的なテストプログラム」に沿って試験、追跡、報告する義務を負います。

中国では、アリババなどのE-コマースプラットフォームが供給者に対して検証サービスを提供しています。供給者は、現地チェックに加え、認証試験および検証試験を受けます。これらの試験に合格すると、アリババ上で消費者に対して供給者の信頼性を示す「ゴールドサプライヤー」タグが表示されます。供給者はまた、独立した公平な検査期間により、法的地位から生産能力・将来性に至る業務のあらゆる側面について定期的に評価されます。

しかし、これらの規制は世界の多くの地域では適用されていません。このような場合、E-コマース企業は、テュフズードを始めとする製品安全性を認証する機関を検索し、輸出入業監査、製品性能および耐久性に関する試験を実施することができます。

供給者から消費者への保証

製品安全性への要求は、E-コマースの急増に伴いますます拡大を続けています。2019年には480億ドルに達すると予測されている消費者向け電子小売市場と比較して、企業によるE-コマース市場は1兆1,000億ドルの価値があると予測されています。新興市場はこの成長に大きく寄与すると予想されています。今後さらに多くのE-コマース業者がクラウド基盤技術を活用したプラットフォームへと移行することで、コンピューティングに係るインフラストラクチャを削減し、すべての運用をインターネットに移行できるようになると予想されています。これにより業界が簡略化することはないでしょうが、販売のスピードアップと規模の拡大にはつながるでしょう。このような急速な進歩により、安全基準に対する知識と意識の齟齬は、E-コマースのプレーヤー間および消費者間でさらに拡大する可能性があります。

E-コマース市場への規制が困難であることは広く知られています。しかし、安全および認証に関する専門家が継続して最新技術を取り入れ、供給者から消費者に至る製品流通のどの段階で介入しチェックをすべきかを特定できれば不可能なことではありません。

これによりE-コマース製品の世界標準を確立することはできるのでしょうか?そうなれば理想的ですが、異なる国や地域がそれぞれのペースでどのように進捗してゆけば良いかを考えることは非常に困難です。そのため、E-コマースにより消費者の購買意欲が高まる一方で、世界的に規格が変化すると、責任問題が拡大する可能性があります。

顧客の安心を目指す小売業者は、供給者から輸出入業者、消費者への配送まで、E-コマースにおける製品の流通過程全体を通じた試験と認定を通じて、製品の安全性を保証し続ける必要があります。安全基準を満たすよう努力するE-コマースブランドが増加すれば、消費者は信頼を持ってより多くの製品を購入するでしょう。

2020年までには売上高が4兆ドルを突破すると予測され、新興市場からの新規消費者の争奪戦が控えるなか、急速に拡大する電子市場において製品安全への必要性はますます重要になっています。過去23年間のE-コマースから何かを得ることに成功した企業は、製品安全基準を満たし続けることにより妥当性を保つことができ、E-コマースを推進力として将来にわたり長く成長を続けられることが約束されるでしょう。

製品の安全性と認証について、詳しくはこちらをご覧ください。


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